言語化しにくかった課題を明確化し伴走型で検討・提案
ソニーグループの戦略に即した自律的な開発で課題を解決
ソニーグループ株式会社 様
課題と効果
課題
- 自社の戦略を深く理解し、言語化できない課題を共に解決できるパートナーが必要だった
- 既存システムの変更など、新たな開発負荷は回避したかった
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効果
- 顧客の言語化できない課題を引き出し、共創型の伴走支援で移動体験の価値向上を実現
- 既存システムを変更せずアプリを実装、将来拡張可能な基盤を獲得し開発の負荷を軽減
「MR Cruise」の狙いと直面していた壁
MR技術で「移動の退屈」を解消する「MR Cruise」
多岐にわたる事業領域をもち、連結売上高が12兆円を突破しているソニーグループ株式会社(以下 ソニーグループ)。その中で新たな事業として取り組んでいるのが、「移動時間が退屈な待ち時間になっている」ことの解消だ。
「すでにエンターテインメント空間を創出するカート車両『Sociable Cart(SC-1)』を実現していましたが、そのエンターテインメント部分を自社開発の車両から切り離し、既存のモビリティに移植できないかと考えました」と語るのは、ソニーグループ 事業開発プラットフォーム 事業探索部門 SCプロジェクトでチーフビジネスプロデューサーを務める江里口 真朗 氏。その結果生まれたのが、タクシーやバス、電車などの車窓をディスプレイに変え、現実の風景にCGや情報を重ね合わせるMR(複合現実)技術を用いた、コンテンツ配信サービス「MR Cruise」なのだと説明する。
まずはタクシーへの適用が検討され、2024年12月にはその第一弾として「タイムトリップタクシー」の期間限定トライアル運用を開始。客席の前面に置かれた4Kの大型液晶ディスプレイに、走行している場所の江戸時代の風景や、急に隕石が落ちてくるといったエンターテインメントコンテンツが提供された。
このトライアルが好評だったことを受け、2025年11月には「タイムトリップタクシー」の第2弾を運行。同年12月には沖縄都市モノレール「ゆいレール」にて、MR Cruiseを搭載したサービス「たびんちゅレール」の提供が開始されている。

ソニーグループ株式会社
事業開発プラットフォーム
事業探索部門
SCプロジェクト
チーフビジネスプロデューサー
江里口 真朗 氏
「一方的」という課題へのシーイーシーからの提案
しかし「それまでのMR Cruiseはあくまでも『一方的なエンターテインメント』に過ぎませんでした」と江里口氏。乗客は提供されている映像コンテンツを鑑賞するだけであり、乗客の意思でコンテンツに介入したり、反応を返したりといったことはできなかったと振り返る。
この限界を突破するきっかけとなったのが、2024年12月にシーイーシーが行ったプレゼンテーションだった。あるセミナーイベントでSC-1のことを知ったシーイーシー コネクティッドセグメント コネクティッドイノベーション事業部 データマネタイゼーション部 グループマネジャーの栗原 慶典が、自動車メーカーと連携して実現した「道路のどこに穴が空いているか」を推測・特定する技術や、その情報を基にAWSのサービスを利用して修繕業者と連携する仕組みなど、さまざまなデータを位置情報と組み合わせて活用する方法を説明したのだ。
「この頃は、MR Cruiseに関係しそうなお話はすべて聞くというポリシーだったため、この初回の面談もすぐに実現しました。しかし私の上長も参加する2回目の面談まで行くケースはなかなかありません。シーイーシーのプレゼンテーション内容は、このハードルを超えるかなり魅力的なものでした」(江里口氏)。

株式会社シーイーシー
コネクティッドセグメント
コネクティッドイノベーション事業部
データマネタイゼーション部
グループマネジャー
栗原 慶典
パートナーの選定経緯と選定理由
伴走型の提案を評価
シーイーシー 栗原が行ったプレゼンテーションのどこが魅力的だったのか。その1つとして挙げられたのが、ソニーグループとは対極にある考え方と、具体性のある内容だったと江里口氏は指摘する。
「初回面談でお話いただいたのは、PlusLocationという位置情報アプリやAWSを活用したデータ分析技術についてでしたが、ソニーグループがエンタメとしてMR Cruiseを考えているのに対し、シーイーシーは『実社会の課題解決手段』としてこれらの技術を捉えていました。このような別角度からの切り口にとても面白さを感じるとともに、シーイーシーの技術的な実力や提案力の高さも感じられました」。
また提案のスタイルも魅力の1つだったと江里口氏。他社では理詰めのプレゼンテーションが一般的なのに対し、シーイーシーは断定的な言い方をせず、相手が抱えている「モヤモヤしたもの(悩み)」を探りながら、それを一緒に解決していこうという、伴走型のアプローチだったという。
「『絶対にこれが正解です』というのではなく『一緒に試してみませんか』という姿勢でした。単にひとつの提案を行うのではなく、複数の案を提示しながら方向性を一緒に見つけ出そうとするアプローチに、心を動かされたのです。その一方で、ソニーグループ側が潜在的に望んでいながらもなかなか言語化できなかった重要ポイントを、しっかりと押さえた内容だったことも評価しました」。

「体験価値の向上」という目標を共有しながら自律的に開発
2025年1月には江里口氏の上長も交えた2回目の面談を実施。ここでシーイーシーが提案したのが、従来の一方的な映像コンテンツに対し、乗客からのアクションを加えることでさらに場を盛り上げる「双方向型」のアプリ連携企画だった。
実際にサービスを試乗し、顧客目線と技術をかけあわせた提案を実施。ソニーグループ側が潜在的に抱えていた課題を明確化するとともに、それを一緒に解決できる「共創パートナー」として認められたのだ。
開発フェーズでもシーイーシーの持ち味は、重要な役割を果たすことになる。それは「仕様が決まったものを言われた通りに作る」という受託姿勢を超えた、「複数のアイデアを提示しながら自律的に開発を進めていく」姿勢だ。
「仕様をきちんと決めなくても、定期的な打ち合わせで『こんな感じになります』と、実際の画面を提示しながらすり合わせを行ってくれました」と江里口氏。また開発の途中で「こんな機能があるともっと面白くなりそう」といった提案を、積極的にしてくれたともいう。「開発者としての仕事が増えてもいいので、楽しいものを一緒に作っていきたいという想いが伝わってきました」。

MR Cruiseアプリのシステム構成。車内ディスプレイに表示されたコンテンツに対し、乗客がスマホでリアクションできる。リアクション情報はAWS IoTサービスを介して、車内ディスプレイに表示される。
開発されたスマホアプリとその効果
既存システムに影響を与えずアプリを連携
「お客様とは当初から高い信頼関係を築くことができ、アプリ開発もほぼ任せていただきました」というのはシーイーシー 栗原。ここで重視したのが、既存のMR Cruiseのシステムに一切手を加えることなくアプリを実装することと、将来の拡張を容易にする基盤の実現だったという。「PlusLocationを活用すれば、これらの要件も問題なくクリアできると考えました」。
今回開発した双方向アプリの基本機能は、スマホ操作でユーザーがMRコンテンツへのリアクションを行い、それが車載画面に反映されるというもの。アプリの動作はMR Cruiseのシステムとは完全に独立しており、車載画面への反映もMR Cruiseを介さず、画面そのものに「オーバーレイ表示」している。
なおこの他にも、スマホのマップ上に走行ルートを表示して現在地を確認できる機能や、車載画面に表示されるおすすめスポットのQRコードを読み取ってストックできる「お気に入り機能」なども用意。「いつどのルートに乗ったか」という乗車履歴を、マイページ機能によって後から閲覧することも可能だ。
シーイーシーはこれらのアプリ機能を、ソニーグループに負担をかけることなく自ら企画した上で、ソニーグループと共に決めた期日通りに実現。2026年3月に開始された「タイムトリップタクシー」第3弾から提供されている。

MR Cruiseアプリのサーバー側の処理内容。乗客のリアクションは予約時に付与される「予約id」に紐付けられている。これを乗客が乗車する車両の「車両id」に対応させることで、どの車両のディスプレイにリアクションを表示させるかを判断している。
上記の機能要件とリアクションのリアルタイム反映をAWS IoTサービスを活用したアーキテクチャーで実現している。
乗客の満足度が向上、今後も共に改善を進める
MR Cruiseにスマホアプリが加わったことで、乗客の満足度はさらに高くなっている。用意された映像を一方的に見るだけではなく、それに対して「いいね」や「拍手」を送ることで、双方向のエンターテインメントへと進化しているからだ。コンテンツへの没入感や一体感はさらに強くなり、お気に入り機能によって利用者の利便性も向上。公開されているレビューでも「アプリはおすすめ」「アプリがあると子供も楽しめる」といったコメントが寄せられている。
その一方で栗原は「取得・蓄積された乗客のリアクションデータは、今後のコンテンツやサービス改善につながる重要な資産になるはずです」とも述べる。今回構築したアプリ基盤であれば、このようなことにも容易に対応できるという。
「移動をより楽しくするためには、まだまだやるべきことがたくさんあります」と江里口氏。これからも改善を進めていくとともに、必要であれば方針の見直しすら厭わないと語る。「シーイーシーはその取り組みを進めるための大切なパートナーです。これからも補完し合いながら、共に歩んでいただきたいと思います」。

MR Cruiseの車内ディスプレイと、乗客がリアクションを行うためのスマホアプリの画面例。乗客がスマホアプリでリアクションを行うと、その内容がリアルタイムで車内ディスプレイに表示される。

MR Cruiseのコンテンツ「タイムトリップタクシー」の画面例。タクシーが走っている場所の風景に、CGで制作された江戸時代の風景や解説動画などが、重ねて表示される。
お客様プロフィール
- 会社名
- ソニーグループ株式会社
- 本社
- 東京都港区港南1-7-1
- 代表者
- 代表執行役社長CEO 十時裕樹
- 従業員数
- 112,300名(連結、2025年3月31日現在)
- 事業内容
- ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンターテインメント・テクノロジー&サービス(エレクトロニクス製品)、イメージング&センシング・ソリューション(半導体)、金融事業 など
ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクス、半導体など、多岐にわたる事業を展開する巨大企業。世界シェア約50%のセンサー技術やゲーム機開発で培ったXR光学技術、豊富な自社コンテンツIPといった、強力なアセットを保有している。また近年はそれらを垂直統合した「MR Cruise」などの新規事業にも注力。CGコンテンツと周囲の環境を重ね合わせた映像によって「移動時間のエンタメ化」を目指している。
