特別対談|トヨタ×シーイーシー

MaaSアプリ
「my route(マイルート)
開発の歩みと、これから描く未来 
[後編]

TOYOTA×CEC

モビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタが提供する、マルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」。その開発には、シーイーシーが関わっています。トヨタグループの目指すモビリティカンパニーへの変革と社会貢献に、お客様の事業に沿った提案型開発で支援するシーイーシー。今回はこの画期的なサービスの誕生から、東京・福岡での実証を経て本格サービスインまでの歩み、そしてこれから描く未来を、関係者が当時の開発秘話とともに語り合います。

後編では、福岡での実証実験で得られた成果と、本格サービスインまでの経緯、そしてこれから描く未来について、ご紹介します。

左から

間嶋 宏
トヨタファイナンシャルサービス株式会社 イノベーション本部
モビリティサービスグループ my routeプロジェクトリーダー
兼 トヨタ自動車株式会社 新事業企画部 未来プロジェクトグループ 主幹
蔡 晟尉
トヨタファイナンシャルサービス株式会社 イノベーション本部
モビリティサービスグループ 主幹
兼 トヨタ自動車株式会社 コネクティッドカンパニー MaaS事業部 Autono-MaaS開発室
コネクティッド先行開発部 Info Tech シニア・リサーチャー/主幹
辻 理恵
株式会社シーイーシー デジタルインダストリー事業本部
コネクティッドサービス事業部 コネクティッド第一サービス部 グループマネジャー

テストからわずか半年で、福岡での実証実験がスタート

東京におけるテストで実用化に向けた手ごたえを感じた本プロジェクトは、次なるステップとして、福岡で実証実験が行われることとなりました。福岡の実証実験は、2018年11月1日から1年間実施。東京でのテストから半年後というスピードで実行されました。

― 実証実験が福岡で行われることになった経緯を、お聞かせください。

蔡氏「次なる実証実験は地方都市でと考え、2018年の夏ごろから、全国を巡って候補地を検討しました。政令指定都市をはじめ、主だった都市にはほぼ行きました。まずは県庁、市役所など自治体を訪問して、その地域の交通事情や課題をヒアリング。そこから地元の交通会社をご紹介いただいて訪問して、をひたすら繰り返しました。いくつか候補地がある中で、最終的に福岡になった理由としては、福岡は新幹線、飛行機、地下鉄、バス、船もあって、大都市なのに街がコンパクトであること。そして、地元の交通会社である西鉄(西日本鉄道株式会社)さんが非常に協力的だったことが決め手でした。西鉄さんは鉄道、バス、タクシーに加えて商業施設もホテルもある。やはりこのサービスは、地元の交通会社が協力してくださらないと難しいですから。」

「福岡にはシェアサイクルや船もあって、それも含めたマルチ検索が試せる点も魅力でしたね。」

蔡氏「西鉄さんはデジタルの良さをどう活かすかに積極的で、さまざまな部署の方が参加してくださいました。街づくりのため、バスのチケットだけでなくデパートなど商業施設で使えるクーポンやキャンペーンとか。一緒に育ててくださる空気がありがたかったですね。」

間嶋氏「実証で最初に扱った西鉄バスのデジタル乗車券が今でも最も人気のある商品です。もっとも凝ったチケットとしては、福岡市内の公共交通(西鉄バス、西鉄電車、JR、昭和バス、福岡市地下鉄、福岡市営渡船)が1日乗り放題になる、訪日外国人専用のフリー乗車券『FUKUOKA TOURIST CITY PASS』のデジタル化も実現しました。」

FUKUOKA TOURIST CITY PASSイメージ

事業者側の運用面も意識したシステム開発が重要

― テストより大規模な、実証実験ならではのご苦労はありましたか?

蔡氏「このシステムが難しいのは、アプリとしての機能は完成しても、運用面で対応できないと交通事業者からNGが出ることもあります。そうした際も、シーイーシーはアイデアを出してくれました。」

「その点は、こうなっていれば現場でも対応できるのではないか、これではだめでしょうか、聞いていただけませんか、というような会話をよくしました。」

蔡氏「バスの運転手さんだけで数千人いらっしゃいますからね。お客様がこのアプリ画面を見せて乗ってこられるので、こういう対応をしてください、といった講習が必要。不正利用の防止も重要ですので、繰り返し勉強会を開催して、浸透していただきました。」

「そういう事業者側の学習コストが高くなるとよくないので、一目で誰もが理解しやすいUI、誰でも操作しやすいシステムが求められる難しさもありますね。」

間嶋氏「その点では、シーイーシーはシステム作って終わりではなく、実際に福岡まで出向いて使い心地を試してくれたのが、すごく印象的でした。」

「端末でエリア判定しているので、東京だと試すことができず、福岡に行くしかない。ただ、当時はサービスがまだオープンしていない時期。蔡さんに各事業者に交渉いただいて、オープン前に検証させていただきました。空港出たところでタクシー呼んだけど本当に来るのかな、シェアサイクル予約したけど鍵は開くのかな、とドキドキしましたが、きちんと機能していて安心しました(笑)。」

間嶋氏「我々からも修正要望を出しますが、シーイーシーは身をもって体験して、ここは直したほうがいいと改善リストも作ってくれるのはありがたかったです。」

「チームとして言いやすい雰囲気を作ってくださっていたので、意見を出し合えたのがよかったです。」

蔡氏「新しい領域の開発ですし、この世界は正解が誰もわからないですから。皆が意見を出し合って開発することが大切ですよね。」

2018年11月1日より1年間行われた福岡での実証実験で、約30,000件のアプリダウンロード数に加え、利用後アンケートでは、約8割のユーザーが「満足」と回答するなど大変好評で、市場性が認められました。そのため、実証を行った福岡市に加えて、北九州市にもサービス提供エリアを拡大、2019年11月28日より本格実施に至りました。

好評を踏まえ、サービスの本格実施へ

― 実証実験における反応はいかがでしたか?

間嶋氏ダウンロード数も順調に伸び、アプリ利用後のアンケートでも約8割が『満足』と回答くださいました。最初はバスの乗り放題チケットを販売して反響が良かったので鉄道にも展開しました。さらに食事、グルメクーポンの配布もスタートさせました。この間、ユーザーインタビューも実施して、機能面の改善も継続しました。」

「アプリ上に自由にコメントが記載できるフィードバック欄があり、開発チームにもシェアいただいています。自分がよく使うルートが上位表示されない、といった厳しい声もありますが、利用者の生の声はとても参考になります。」

―その後、本格実施に至った経緯をお聞かせください。

蔡氏「実証実験の成果を得て、西鉄さんからもぜひ本格サービスとして開始してほしいとのご要望をいただきました。私たちとしても本気でやる覚悟を示さないといけないと考え、2019年11月、福岡、東京、名古屋の3拠点で記者会見を行い、本格実施のプレスリリースを発表しました。」

当時のプレスリリース
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/30632540.html?_ga=2.96242012.1720895206.1662174205-591973159.1662174205

― 本格実施にあたって、何か意識されるところはありますか?

蔡氏「システムトラブルでシステム止まったりすると事業に影響が出ますので、安定稼働が重要です。サービスへの期待が高まる分だけ、責任も重くなりますね。」

間嶋氏「他には不正利用の防止策ですね。利用が本格化するにあたっては、不正はできるだけ避けたいので。」

「アプリ画面の読み取りで対応できれば楽ですが、インフラコストがかかるので現実には難しい。画面上でいかにわかりやすく判別できるか、工夫が必要でした。」

トヨタがこれから描く未来~移動をもっと豊かに、街の賑わいに貢献したい

― これからの展望についてお聞かせください。

間嶋氏「2020年春から横浜市、水俣市、続いて宮崎市・日南市・富山市にも展開するなど、順次全国へ拡大しています。今年度は九州・沖縄への全域展開も進めています。加えて交通事業者や旅行会社など移動に関わるサービサー各社とも連携し、サービス拡充と利便性向上に取り組んでいます。」

蔡氏「もちろん、やるからには全国制覇したいと考えています。ルート検索はもともと全国で使えるのですが、地域展開にはその地域に特化した情報を充実させる必要があります。そのためには地域の自治体、交通事業者の協力が欠かせませんので、一つずつ拡げていきたいですね。コロナ禍との兼ね合いがありますが、旅行や移動も活発になってきていますので、各地でさまざまな取り組みがスタートしています。こういう世の中の動きがアプリで見えるのも、本サービスの面白いところだと感じます。」

― あらためて、トヨタとして目指していることは?

間嶋氏「本サービスのビジョンでもある、もっと移動したくなる環境づくりを通じて、すべての人の移動の自由と、ずっと賑わう街づくりに貢献したい、ということに尽きますね。移動をもっと豊かにする、その先にある街の賑わいに貢献したいという想いは、ずっと変わっていません。生活者目線でさらにサービスを拡充させたいです。」

蔡氏「トヨタはモバリティカンパニーになると宣言しています。車だけに限らず、いろいろな交通手段と組み合わせて、人々の移動をもっと便利にサポートしたい。この本サービスのコンセプトと、トヨタの目指す方向性がどんどん近づいていて、うれしく感じます。」

シーイーシーへの期待~
これからも早く具現化する、
意見を述べる姿勢をキープしてほしい

― シーイーシーに対する期待をお聞かせください。

蔡氏「最初期から長く関わってもらい、コンセプト・デモ開発、テスト、実証実験とその都度非常にタイムリーに動いてくれました。それがなかったらこのサービスは生まれておらず、別の形になっていたかもしれません。これからもすぐ動くところ、モヤモヤしたアイデアから具体的なシステムを作り上げる、その強みはぜひキープしてほしい。絶対これからも必要なことだと思います。」

間嶋氏とにかく動くものを早く作るスタンスに感謝しています。生活者の目線は机上でいくら考えても想像でしかありません。ユーザーの方々に響くかは、実際にリリースして試すしかない。その点で、常にスピーディーに要望に応えていただき、一緒にやれたのはすごく助かりました。そしてこれからも『それはちょっと違うのでは?』とお互いに言い合える関係性で、お付き合いいただけるとありがたいです。」

― それでは最後に、シーイーシーから一言お願いします。

「今回、最初の試作から5年以上一緒にやらせていただいて。試作や研究開発など、数カ月単位の短いスパンのお仕事のほうが多い当社としても、ここまで長く関わらせていただくのはそう多くありません。いま行っているアプリの改修が終われば、トヨタファイナンシャルサービスさんに引き渡しができる状態になり、一区切りかなと。またこれからも、新たな研究開発などで、幅広くお手伝いできればと思います。今後とも、よろしくお願いします!」

― ありがとうございました。

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